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ITで地域は元気になる

ステップサーバ 日本”元気印”増産プロジェクトで2009年7月〜2010年3月に連載していたコラム記事です。


ITで地域は元気になる! No2地域コンテンツを地域外へ流通させる


毎週、楽しみに見ているテレビ番組に「秘密のケンミンSHOW」があります。

「みのもんた」と久本雅美がその地域ならではの習慣や食べ物などを紹介する番組です。いつもは楽しんで見ていますが、少し前に放送された「大阪府民は床屋さんで自分の顔を洗う」はショックでした。

大阪府民は床屋さんで自分の顔を洗う

床屋

私がよく行く床屋では、散髪、髭剃り、洗髪という流れで一連の作業が終わると、「さあ、どうぞ」と店主にうながされます。蛇口から出してもらったお湯で自ら顔を洗うためです。横に控えている店主が間髪いれずに乾いたタオルを差し出し、タオルで顔を拭きます。全国どこの床屋でも同じだと信じていました。

ところが番組では床屋で顔を洗っているのは大阪だけというコメントが。「嘘だろう!」、すぐ東京の知り合いに「床屋へ行ったら、自分で顔を洗うよね」と聞いたところ、「床屋でそんなことしないよ。濡らしたタオルで顔を拭いてもらうだけ」と返事が返ってきました。

いつもは番組で「大阪府民に『米朝』の意味を聞くとアメリカと北朝鮮のことではなく人間国宝の落語家・桂米朝さんを連想する」と紹介されると、「そんなの当たり前やん」と突っ込みを入れて笑って見ているのですが、この時だけは信じていた土台が崩されショックでした。

テレビをつけると標準語で全国ニュースが流れ、いろいろな土地へ行っても同じような町並みを見ることで、全国一律になった印象がありますが、地域にはその地域ならではのものが今もたくさんあります。

地域のディープなコンテンツで勝負

てぃーだブログ

沖縄県に特化した地域ブログサービス「てぃーだブログ」があります。「てぃーだ」とは沖縄の方言で「太陽」という意味で、「てぃーだブログ」では無料でブログが作れます。

旅行コーナーに掲載されているブログを見てみると、8月16日に開催された「与那原まつりの綱曳(つなひき)」が載っていました。運動会の綱曳とはレベルが全然違います。まず大勢の人間が木で組んだ台の上に綱を置き、道を渡っていく写真が掲載されています。綱が細長い船のようになっていて、綱の上には民族衣装を着た人が10人ばかり立っています。これが「道ジュネー」で、祭りで道を練り歩くことを言うそうです。この時点で運動会の綱曳とは似ても似つかないものになっています。

戦いの前には女性の手踊りメーモーイ(前舞)が行われます。やがて東西に分かれた雌雄二本の大綱が中央に寄せられ、カナチ棒なるもので結ばれると、「サーサーサー」の掛け声があがって、一気に引き合います。太鼓、鐘、銅鑼、ホラ貝が打ち鳴らされ、空には派手な装飾が施された旗頭(はたがしら)という大きなのぼりが舞います。参加者は「綱武士」と呼ばれており、まさに戦い。スポーツじゃないですね。

次に「グルメ」コーナーにあるブログを見ると沖縄のファミリーマートでは「ポーク卵 シーチキンマヨネーズのおにぎり」が売られていました。ポークはポークランチョンミートのことです。「ポーク卵」は沖縄でよく出る家庭料理で、おにぎりの定番である「ツナマヨ」とコラボさせたおにぎりです。ブログを見ているとファミリーマート以外でも売られ、沖縄ではメジャーな食べ物になっています。ポークランチョンミートが入った缶詰はスパムメールの語源となった「スパム」ですので、「スパムおにぎり」とも呼ばれているようです。

「与那原まつりの綱曳」や「スパムおにぎり」のようなディープな内容は沖縄の観光ガイドには出てきません。まさに地元ブロガーによる沖縄のレア情報になります。

「沖縄が好き」がミソの「てぃーだブログ」

「てぃーだブログ」は2005年3月にスタートし、開設されているブログは42000サイトを超えています。ブログ開設者は沖縄の住人が多いのですが、県外に住んでいる沖縄県出身者や、沖縄が好きな人もブログを開設しています。この「沖縄が好き」がミソになっていて、観光客や移住を考えている団塊世代、ダイビングしたい若者などを取り込んでいます。沖縄のディープなコンテンツが集まっていますので、アクセス数は1日に10万人以上あります。

ブログ開設者の6割が沖縄県の住人ですが、閲覧の6割が沖縄以外の他府県になっています。沖縄で作られたコンテンツが沖縄で消費される以上に他府県で消費されていることになります。テレビや雑誌は東京で作られたコンテンツが地方で消費されるスタイルでしたが、「てぃーだブログ」では逆転現象を起こしています。

地域のお金は地域へまわす

今まで地域で集めたお金は地域にまわりませんでした。

地方銀行が地域の住人から預金を集め、それを地元企業に融資すれば地域にお金が回ることになりますが、地元企業にそれほど資金需要がありません。預金額と比べると「預金>融資」になってしまいます。そこで地方銀行は国債などを買うことになり、結局、地域で集めたお金が都会へ流れます。また企業も地方で稼いだお金が東京本社へまわされます。これは郵便貯金でも同じです。地域のお金が地域にまわらず、東京などの都会へ吸い上げられ使われるという構図がずっと続いてきました。

インターネットが普及し、ローカルコンテンツが充実していくと地域のコンテンツを地域で参照する動きが生まれ、中には「てぃーだブログ」のように地域外で多く参照されるようになります。ディープなローカルコンテンツが増えるとコンテンツの流れに従い地域のお金が地域へゆっくりですがまわりだします。

もっともディープなローカルコンテンツが充実すれば、一番恩恵を受けるのはネタ探しに奔走している「秘密のケンミンSHOW」番組スタッフでしょうね。

※スパムメールの語源

スパムは豚肉の缶詰で、アメリカのホーメル・フーズ社が販売しています。モンティパイソンの番組で使われ、スパムメールの語源になりました。モンティパイソンというのは日本でも熱狂的ファンが多いイギリスのコメディアングループです。モンティパイソンが BBC放送のコメディ番組でレストランを舞台に「スパム」という言葉を80回ほど繰り返すコントを行ない、ここから「不快でクドイ」という意味で、ネット上のスパム行為に結びつきました。スパムは安い缶詰で、レストランで一般的に使われる食材ではなく、それを皮肉ったコントでした。

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