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ITで地域は元気になる

ステップサーバ 日本”元気印”増産プロジェクトで2009年7月〜2010年3月に連載していたコラム記事です。


ITで地域は元気になる! No7日本がダメなら海外からきてもらおう


有給休暇を取得していますか

独立してよかったのは自分で仕事のコントロールができること。反対にビジネスマンをうらやましくおもうのが有給休暇。独立すると風邪で熱がでても休んだら収入がへるので休めません。皆さんはきちんと有給休暇を取得していますか。

私がビジネスマン時代、システム開発をしていたので深夜残業、土日出勤オンパレードで休む暇がありませんでした。忙しい開発プロジェクトが終わったとき、上司に1週間休みをもらって東北へ旅立ちました。盛岡でわんこ蕎麦を食べたあと、念のため会社へ電話しようとおもったのが運のツキ。当時は携帯電話などない時代で、電話に出た上司が「今、どこにいる!バグがでているのですぐに帰ってこい」とどなり声。なくなく旅行日程を短縮して帰ってきました。ところが客先で話をきいたらバグではなく仕様変更。さすがにぶちきれました。

日本の有給休暇消化率はわずか8%で最下位

リゾート

さて有給休暇をとって海外旅行にでかけると、ホテルのプールに寝そべってのんびり読書している欧米人をよくみかけます。こちとら少しでも観光地を効率的にまわろうと地図を片手に朝早くホテルを出発。馬車馬のように旅のスケジュールをこなしています。寝そべっている一人にどれぐらいホテルに泊まっているのかきいてみると「1ウィーク」という返事。全部の旅行日程をきいてみると「1マンス」。

よくそんなに仕事を休めるなとおもうのですが、世界最大のオンライン旅行会社「エクスペディア」が主要11カ国の有給休暇を調べたところ日本人の有給休暇・平均取得日数は8日、調査国中で最低でした。平均付与日数は15日で、これはアメリカにつぐワースト2位。

この15日の有給休暇をすべて消化した人の割合は、日本は8%で最下位。他の国は50%をうわまわっています。有給休暇があってもやっぱり日本はとりにくいのですね。ヨーロッパの有給取得日数平均はなんと26日。バカンスの国、フランスにいたっては36日もあります。そらプールで寝そべって、「1マンス旅行している」といえるはずです。

長期滞在の旅行客を地方に呼ぶ

1ケ月も休みをとり、のんびりプールで寝そべるような旅ができるのであれば、ぜひ日本へ、しかも地方へ来てもらいましょう。京都や東京だけでなく外国人の中には世界遺産をまわってみようと熊野古道を訪れるようなマニアもいます。ただし受け入れ側では外国人観光客にきてもらおうという視点が不足しています。

そんななか、がんばっているのが田辺市熊野ツーリズムビューロー。熊野古道・入口にある田辺市のちかくには有名な白浜温泉があり、大きなホテル群にアジアからのグループ観光客を迎えています。温泉天国・日本を訪れる観光客の70%はアジアで、1番の目的が温泉。田辺市も温泉地ですが規模がちいさく白浜のようにアジアからのグループ観光客はきません。そこで日本のふるさとに関心がある欧米からの個人客をねらうことにしました。

熊野古道

田辺市熊野ツーリズムビューローでは国際観光推進員としてカナダ人を採用。外国人からみた外国人のための観光情報作りをはじめます。まず改善したのが日本語しかつうじない環境。田辺市はゆたかな魚介類や山の幸にめぐまれ、割烹、居酒屋、寿司屋などいろいろな飲食店がありますが、いきなり英語で接客してといっても無理なはなし。そこで飲食店にたのんで日本食メニューを日本語・英語表記にし、メニューがおいてある16店舗をマップで紹介。英語がしゃべれないなら英語メニューと身振り手振りでなんとかしようということです。

昔、スペインの片田舎の食堂にはいったら英語が通じず、メニューはすべてスペイン語。なにを注文したらよいか、途方にくれているとウェイターに厨房にひっぱっていかれました。「お前が食べたいのはどの料理だ」とできあがっているいくつかの料理を指さしながらいっていました。(いっていた気がするだけです)「私が食べたいのはこれだと」と指さしたら、ニコっと笑って「シ(スペイン語のはい)」。考えてみたら、これで十分です。

業種ごとにワークショップをおこない地域全体でおもてなしの質をあげる

田辺では外国人への接客サービスの質をあげるため飲食店やホテルなど業種ごとに事業者を集めワークショップを開催。今では神職・巫女を対象にしたワークショップもおこなわれています。外国人参拝客への対応のレベルアップです。安産や交通安全など種類が多い「お守り」の翻訳や、境内の案内などが外国人観光客にとってわかりやすくなっているかチェックします。

田辺市熊野ツーリズムビューローでは英語、フランス語、中国語、ハングル語のホームページを作成し熊野古道など観光情報を情報発信しています。外国人に田辺市が弁慶の生誕地といっても弁慶がつうじませんので外国人が必要とする観光情報に的をしぼって発信しています。アンケートでは田辺市を来訪するきっかけは、前に来た人からすすめれた「口コミ」効果が高いことが分かりました。田辺市では日本の文化や雰囲気を守りながら外国人観光客が利用しやすいような仕組みづくりをこころがけています。

まだまだ課題もあります。たとえばインターネットで紀伊半島のバスの時刻表をみつけるのは日本人にとっても至難のわざで外国人観光客にとってさらにハードルが高くなっています。

「非誠勿擾」(狙った恋の落とし方)という中国映画の舞台が知床、阿寒の道東となり映画のヒットによってロケ地を巡る北海道観光ブームがおきました。韓国ドラマ「IRIS(アイリス)」は秋田が舞台で、やはりロケ地をめぐる観光ブームがおきています。ただ、一過性のブームになりがちで、じっくり時間はかかりますが田辺市熊野ツーリズムビューローのように地域全体の観光地としての質を上げていこうと取組は参考になります。

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